裁判の傍聴をしてきた。
いきなり何を不可思議な行動をとっているのかと思われるかもしれませんが、
諸々の事情により、個人的興味が生まれたから、とだけ言っておきます。
前々からうっすら興味はあったのですが、行動に移したのは今回が初めて。ドキドキです。
傍聴するには
傍聴するにはどうしたら良いのか、少し調べた。
日本の裁判は原則公開のため、当日裁判所に行けば、誰でも傍聴することができる。
チケットも予約もいらない。なので逆を言えば人気のある裁判は先着順ないし抽選になることがあるし、
その場合は傍聴券というものを求めて人が並ぶのだそう。
裁判所はどこにあるのか
裁判所は各都道府県にあります。
各地の裁判所 | 裁判所
東京など大都市は、扱う案件が多いからか複数箇所にある。
東京のメッカ(?)は霞ヶ関にある東京地方裁判所及び千代田区にある最高裁。
ですが私は今回東京地方裁判所立川支部に足を運びました。近かったから。
どーん。東京地方裁判所立川支部。
JR立川駅から、モノレールで一駅の高松駅から徒歩五分のところにある。
遠目から見ても「あれだろうか」とわかるほど、巨大で立派で新しい建物である。というか周りに何もないのですぐわかる。
抱いていた裁判所の荘厳なイメージよりは、綺麗なオフィスビルという印象。
館内どころか、敷地に足を踏み入れたら写真撮影は禁止。
理由は後からなんとなく察したのですが、
意外とその辺を今から判決を受ける被告が歩いていたりする。
被害者やその家族とかももちろんいるので、その辺りを守るためかなとも思った。
入館
入館すると、手荷物検査があります。
飛行機の国内線に乗るときのアレを思い浮かべてもらえれば概ね正しい。
危険物の持ち込みなどは厳しくチェックされているのでしょう。
どの裁判を見ればよいか
入口を通過すると、「その日にやる裁判プログラム表」みたいのが置いてあるので、
それを見て、「どの裁判を見ようかな」とやるわけです。
これはネットには公開されておらず、現地に来るか、電話確認くらいしか方法がないそうです。撮影ももちろん禁止。
例外として、裁判員裁判は裁判所のHPから開廷日が公開されています。この差はなんででしょうね。
このプログラム表には罪状や被告人の名前もばっちり公開されており、
裁判では本籍や住所なども公開される。
当たり前だけど起訴されるってこういう点でも社会的ダメージでかいんですね。
冤罪で起訴とかまじたまったもんじゃないなと思いました。
裁判は大まかにいうと、刑事・民事裁判と、
「新件(今日が1回目)」「審理(2回目以降)」「判決(最後)」に分かれている。
初心者は刑事がおすすめと聞いたので、刑事裁判で見れそうなものから回ってみました。
今回回れたのは5つ。
①窃盗
②監護者わいせつ
③窃盗と暴行
④準強制わいせつ
⑤窃盗・電子計算機使用詐欺罪
穏やかでない字面が並びますが、せっかくの初傍聴なので備忘録的に書いておくとします。
①窃盗罪(審理)
キャッシュカードを騙し取って190万円を引き出したという窃盗罪。
この人は勾留中らしく、被告の両サイドを係官?の二人が挟む形で、入廷と退廷の際は手錠と腰縄も付けられていました。
びっくりするほど小柄なおじさん。
毎日自由を制限されている人、というのを目の当たりにすると
いかに自由が当たり前で大切なことなのかをなんだか実感する。
この人は余罪がたくさんあるらしく、次回以降も審理が続くようです。
終わり際には「次いつにする?」というのを裁判官と弁護士・検事で決めるらしく(初めて知った)
裁判官「次どうする?」
検事「えーめっちゃ余罪あるんで、なんやかんやで、10月3週目には」
弁護士「私その日10時半以降だとありがたいっす」
みたいなやりとりが割とラフになされてて次の飲み会決めるみたいだなと思いました。
②監護者わいせつ(判決)
これ、今日の中ではなかなかに胸糞案件でした。
判決は懲役2年4ヶ月、執行猶予4年。
未成年の実子の胸を触ったりわいせつ行為をしたりしたという案件。
慰謝料と、二度と接触しないという条件で謝罪をしているようでした。
世の中にはそういう父親がいるとは聞くけれど
年端もいかない実の娘にそのような行為をするとはどういう認知なんだろう。
その娘の今後を思うとやりきれない気持ちになった。
③窃盗と暴行(判決)
懲役2年、執行猶予3年。
自動車内から現金や財布を盗んだ、かつ留置所かどっかで同室者に文庫本を投げつけたとのことだった。
生活保護受給中の女の人。
生活保護費は使い切り、盗んだものは好きなキャラクターグッズを買うのに使ったという。
判決後、反省の弁も述べた。
たったそれだけで判断してはいけないのだろうが、恐らく何かの支援が必要とされる人なんだろうと思った。
生活保護費をそんな使い方するなんて、と怒る人もいるだろう。
しかしそもそも、生活費を自分で稼いで、その中で欲求を自制したり
切り詰めて生活するという力を備えている人は生活保護のお世話にはならないよなぁと思った。
④準強制わいせつ(審理)
電車で泥酔していた女性を介抱するふりして駅で下ろし、
衆人環視の中の駅のホームで女性器を愛撫したという本日No1のトンデモ案件。
百歩譲ってそんな気持ちになったとして、なんですぐ捕まるような駅のホームで事に及ぶのだ。わからん。いやわからなくていいわこんなん。一生わかってたまるか。
妻が情状酌量の証人として証言台でお話しされていました。
今後離婚をするとのこと。離婚しても、今後もできる範囲で支援はすること。
それを聞いて被告号泣。めっちゃ号泣。大の大人がぐっずぐずに号泣。
いや、泣くくらいならそんなことすんなよ・・・
と誰もが思ったであろう空気がちょっと面白かったです。
被告の反省の弁では
「これからしっかり働いて、少しでも被害者のためにお金を送ろうと思います」
と話していたがいやいやいやおっさん前科持ちでこれからそんなに働けんのか???と思ってしまった。
この人は前科があるとのことで、現在性依存の治療を受けているとのこと。
性依存の治療ってどうやるんだろうね。ちょっと気になる。
⑤窃盗・電子計算機使用詐欺罪(判決)
懲役3年、執行猶予5年。
電子計算機って何かと思ったら要するにクレジットカードの情報を盗んで不正利用のことだって。
被告は20歳そこそこの聡明そうな青年。(生年月日が読み上げられるので歳もわかっちゃう)
445万円余りを不正送金させて、ギャンブルや借金返済に使っていたとのこと。
この被告は勾留されていないので、普通に入口から入って判決を受けたら普通に帰って行きました。
勾留されていない被告人は、普通に家から裁判を受けに来るので
帰り道や同じエレベーターに被告人がいるということが当たり前にあり得るのです。
なもんで、
えっ、あの人さっき第●法廷で判決受けてた人だ!みたいなのが裁判所のあちらこちらで見られます。
犯罪とは縁がないと思っていた自分と、
さっきまでの被告席にいた人が同じエレベーターに乗ってるっていうのはなんだか不思議な感覚でした。
判決が出た後、弁護士さんとソファーに座って
「ありがとうございました」
「くれぐれも繰り返すんじゃないよ」
というやりとりを繰り広げておりましたが、弁護士も大変な仕事だなと思いました。絶対再犯する人とかもいるんだろうな。
傍聴はいいぞおじさんとの出会い
さて私は無事傍聴デビューを飾ったわけなのですが、
私がフラフラしていると一人の初老の男性に話しかけられました。
傍聴はいいぞおじさんの登場です。どの界隈にもいるもんだ
この初老の男性、もう定年を迎えており悠悠自適の生活。
Googleカレンダーは傍聴の予定でぎっちり、
裁判所に毎日通っているという筋金入りの傍聴はいいぞおじさんでした。
このおじさんが傍聴のあれこれを教えてくれたのですが、
「僕なんてまだまだ。本物は霞ヶ関に通うんだ」
「ここによく来るカップルは傍聴デートをしてる」
「おじさんおすすめ裁判官」
などを教えていただき、まだまだ自分の知らない世界があったもんだ・・・と空を見上げて本日は裁判所を後にしました。
パンフレットがあったのでもらってきました。
色んな意味で、感情が揺さぶられる経験をした。
毎日通おうとは思わないけれど笑、なんだかふとした時にまた足を運んで、
自分では想像もしないストーリーに触れたくなるかもしれない、とは思いました。
興味ある人は、一度足を運んでみると良いのではないかしら。いろいろ揺さぶられますよ。
※裁判所は平日しかやってないので気をつけてね!